1993年製作/203分/G/フランス・ポルトガル・スイス合作
原題または英題:Vale Abraao
配給:プンクテ
劇場公開日:2025年4月18日
監督 マノエル・ド・オリヴェイラ
脚本 マノエル・ド・オリヴェイラ
原作 アグスティーナ・ベッサ=ルイス
出演 レオノール・シルヴェイラ セシル・サンス・ド・アルバ ルイス・ミゲル・シントラ
撮影 マリオ・バローゾ
美術 マリア・ジョゼ・ブランコ
衣装 イザベル・ブランコ
編集 マノエル・ド・オリヴェイラ バレリー・ロワズルー
ナレーション マリオ・バローゾ
短い感想
ドアノブを掴んだエマ(レオノール・シルヴェイラ)の手にカルロス(ルイス・ミゲル・シントラ)が自分の手を重ねた時の凄まじい睨みがもっとも印象的だった。「貴様、自分が何をしたのかわかっているんだろうな?」とでも言うような。正確にはそういう意図ではなかったかもしれないが、とにかく凄かった。カメラ目線も意図的に用いられており思わず笑うシーンも。今回の特集上映のポスターになっているエマが猫を抱えているシーンでも、睨みが効いていた。猫まで睨み、「ゴロロロロ………」と低く唸っていた。眼差される側が眼差し返す映画だった。
しかし、40〜50代の男性が10〜20代の若い女性に惚れて始まる話はおしなべて気色が悪いし、男女二元論に基づく種々の講釈には鼻白む。同性愛についての言説も「生物学的には」なんて言う現在では明らかに間違いとされている考えがベースなので得るものは一切ない。また、結局は女性が若くして死ぬ話であり、いくら台詞でフェミニズムの視点が提示されようと、映画そのものがそれを体現できていない。「片足が不自由」「耳が聞こえない・話せない」といった身体特性と人間性を紐づけている点も看過できない。時代を越えられる映画ではなかった。
余談
前半ではナレーションが多用されており、パンフレットを読んだところこの演出にも監督なりのメッセージがあるようなのだが、説明過多な映画は好きではないのでつらかった。視覚芸術を用いるのであれば映像で説明してほしい。後半にいくにつれてナレーションは減るものの、なんせ3時間23分もあるため今度は体力的に厳しくなってきてしまい憔悴した。
Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下 7Fのスクリーンは比較的座席幅が広く上下の間隔も広めで荷物を引っ掛けるフックもあるため鑑賞には不自由しないと思っていたが、F列から緩い傾斜が左右中央の通路のみならず座席の足元にもついているため、足が水平に着地できずしっかりと体重を支えられず、結果長時間の鑑賞に耐えられなくなっているのかもと思った。「じゃあE列より前に座れ」と思われるかもしれないが、スクリーンは高めの位置にあるため前方の席では首に支障が出てくる。どうにかならないものか。